ちょっとした出来心が背負わせたもの

強い寒気のお陰で全国的に冷え込んでいますね。夜間や早朝の強い冷え込みが身に染みます。布団に横になっているとヒンヤリした空気が顔にヒタヒタと押し寄せてくるようで、頭まですっぽりふとんに潜って眠っています。カゼを引いている身には辛い冷たさですねえ。朝方には氷点下になる日もあることですし、そろそろ夜間もストーブをつけて過ごそうかと思います。

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市内で一人暮らしをし、バイトをしながら大学に通っている妹から電話が来た。旅行に行って来たお土産を渡したいから、取りに来てよという連絡だった。わたしの大好きな甘いもの、お菓子類を買ってきてくれたのだという。ありがとう、妹よ。週末、相方の都合が合えば、車を出してもらって取りに行くよ。旅行に行く度にわたしにもお土産を買ってきてくれる心根の優しい妹君。しかし妹は、わたしに対して根に持っていることがある・・・。

わたしがまだ実家で暮らしていた頃、もちろん妹も一緒に暮らしていた。わたしは会社に勤め始めたばかりで妹はまだ小学生だったあの頃のある夜、わたし達はなぜか「目突き我慢大会」をしていた。「目突き」とはもちろん、手をじゃんけんのチョキの形にして、それで相手の目を突くという恐ろしい行為だ。しかし「目突き我慢大会」とは、実際に目突きをしあうのではなく、目突きをするフリをして、目をつぶらずにいられた方が勝ちという遊びである。なぜそんな遊びを始めたのか、今となってはその理由はさっぱり解らないし思い出せない。あんな遊び始めなきゃ良かった。なのに、始めてしまったお陰であの凶行は行われてしまったのである・・・。

わたしは目突きが怖くてすぐに目をつぶってしまう。指先が目の前にある、あれで突かれたらすごく痛いだろうしきっと泣いてしまう、そう思うと指が近づいてくるのが恐ろしくて目をギュッと閉じてしまうのだ。そんなヘタレなわたしの様子を見た妹は、「ダメだなぁ〜、わたしは絶対につぶらないよ。ほら、やってごらんよ。」と自慢げに言い放った。わたしはそんな妹に対して「つぶるに決まってるじゃん。怖いんだからね。」なんて言いながら目突き。すると妹は本当に目をつぶらなかった。誇らしげな様子で勝利に酔いしれる妹。なぜ目を閉じずにいられるのかと不可解な気持ちのわたしは、笑顔の妹に、驚きと疑問を投げかけてみた。すると「こんなの余裕〜。へへ〜ん、わたしの勝ち〜。」という答えが返って来た。いやいやいや、今のは目突きの仕方がゆるかったのだ、勢い良く、そしてスレスレのところで目突き(つまり寸止め)をしたら結果は違ってくるはずだ、と、なぜか目突きごときで熱くなってしまったわたしは、再度勝負を願い出た。「いいよ〜、絶対つぶらないもんね〜。」と快く承諾する妹。そして魔の第二ラウンドのゴングが鳴ってしまった。

笑顔のまま、目を見開いている妹、本当に、本当に目をつぶらないでいることなど出来るのだろうかという疑問で一杯の、真剣な表情をしたわたし。勢い良く目突きを繰り出したその刹那、「妹はきっと目をつぶる。つぶるはずだから本当に目を突いても大丈夫。まぶたに当たるはずだから大丈夫。」という考えが浮かんでしまった。そして「エイッ!」という掛け声と共に・・・本当に目突きをしてしまったのだった。瞬間的に妹の顔からは笑顔が消え、「ああっ!」という甲高い悲鳴を上げつつ、苦悶の表情を浮かべて目を押さえながら床に崩れ落ちて行った。まさか本当に目を見開いたままでいるなんて思っていなかったわたしは慌てて妹に駆け寄り平謝り。プンスカしている妹に怒られまくった。いや、あの時は本当にごめんね。事故なんだよ。悲しいハプニングなんだよ。

あれから何年も経つ今でも、何かあるごとに、目突きのゼスチャーと共に「あの時目突きしたくせに。」と言う妹。それを出されると弱いわたしは、「いやもうマジごめんよ、わざとじゃなかったんだよ、あの時はさー・・・。」とペコペコしてしまう。もう何年も経つんだから許しておくれよ。と言ってもきっとまだまだ言われ続けるのであろう。まさに魔が差したあの瞬間。「目突き我慢大会」の悲劇。

・・・事故だとは言え実の妹に本当に目突きをしてしまうような、こんな姉にもお土産を買ってきてくれる、そんな妹君はとても寛大な子だといつも思うのである。あの時は悪かったよもう本当に目を突いたりしないからさ。だからもう言わんといて〜。