価格高騰の果てに

夕刻のこと。灯油の使用量を抑えようと、暖房を消して過ごしていたわたし。自分の部屋の机で本を読んでいたのだが、ジッとしていると寒くて仕方ない。室温は17度くらいあるので、本来ならばそれほど寒くはないはずなのだが、やはり身体を動かさないでいると冷えてくる。例年ならばここでストーブのスイッチオン、といくところだがこう灯油が高いと節約精神が発揮されてそれもためらわれてしまう。

そこで、身体を動かして体温を上げりゃいいんだな、とおもったわたしはおもむろに立ち上がり、ヘッドホンを耳にあてがって音楽を聴きながら身体をゆすった。最初は軽く左右に身体をゆらしていたが、そのうち足踏みを追加。そうすると少し暖かくなってきたので、身体のゆすりかたを激しくして足を高く上げて足踏みをした。聴いていた音楽がノリノリだったこともあり、なんだか気分も高揚してきてしまったわたしは、ステレオのボリュームを上げ肩にかけていたタオルケットを跳ね飛ばし、でたらめなステップで激しく踊り始めた。そうしていつのまにかわたしはただひたすら無心に踊っていたのだ。身体を温めることが目的だったはずなのに、そんなことはすっかり忘れてめちゃくちゃに身体を動かして踊りまくる。というか踊りの心得があるわけではないわたしの動きは、ただ暴れているようにしか見えなかったであろう。

夫が部屋の入り口の前に立ってこちらを凝視しているのに気付いたのは、狂ったように髪を振り乱して暴れる姿を十二分にさらした後だった(あまりにも夢中になっていたので、夫がすでに帰宅していることも忘却の彼方だった)。見られていることに気付いてハッとし、ピタリと動きを止めたものの、ごまかすこともできずに硬直。ジットリとさげすむように見つめる夫の視線が痛い。そんな彼に「な、なに?」というのがやっとだったわたし。本当は「なんで見てるの?」と言いたかったのだが取り乱していたので「なに?」しか言えなかったのだ。その後わたしはヘッドホンをはずしながら、「なんだよー寒いから体温上げようとして身体動かしてただけだよ。見てんじゃねえよ。」と精一杯平静を装い、見られたことなんて気にしてませーんといったふうにふてぶてしい感じで、夫の横をすり抜けて部屋を出た。そんなわたしの後ろ姿に向かって相方は、「あのなーそんだけもそもそ音がしてたら何やってるか気になるだろう。寒いならストーブつけろよ。」と言ったのだった。

しまった。そうか。スリッパ履いてたし着膨れしてたから、踊るたびに絨毯にスリッパが擦れる音とか衣擦れの音でもそもそもそもそと摩擦音が出ていたんだな。自分はヘッドホンしてるからその音が聞こえなかったけど、隣の部屋にいた夫にはくっきり聞こえていて、それで何やってんだろうとおもって見にきたらわたしが狂ったように踊っていたのであきれて凝視していたとうわけか。

ええい、灯油が高いおかげで恥をかいてしまったではないか。どうしてくれるんだこのっこのっ灯油めっ!