太平の眠りも一気に覚めるよ

ぴんぽん ぴんぽん ぴんぽん ぴんぽん ぴんぽーんと、連続でチャイムが鳴った。誰かがこの家のチャイムを勢いよく連打したのだ。これには、はっきり言ってめちゃめちゃ驚かされた。わたしは飛びあがり、犬のモグさんは背中の毛を逆立てて吠えている。これはもしかして非常事態なのか、と思った。ただならぬ事態が発生したのか、それで誰かが助けを求めておおあわてでチャイムを鳴らしているのか。恐ろしい事態を想像しながら、どたばたと玄関へ急ぎ、ドア越しに「はい」と返事をしてみる。すると、「書留でーす」という答えが返ってきた。・・・え?書留って、あの、郵便屋さんの書留。なんてこったい。居間の窓から外を見ると、家の前に郵便局の赤い車が止まっている。確かに郵便屋さんだ。とりあえず非常事態ではないことがわかった。

まずはほっとしながら、ハンコを取ってきてドアをあけると、配達員の男性はニコニコしながら定額給付金の申請用紙が入っている封筒を差し出した。申請書は20日から順次発送されると聞いていたけど、なかなか届かなかったので待ちくたびれ気味だったわたしは、ようやっと来たか、と思いながら受け取りのハンコを押した。それから配達員さんに、先ほどのチャイムでとても驚いたことを伝えた。「連続でチャイム鳴ったらからびっくりしたよ〜」と。彼は笑顔のまま「すいません」と言い、ハンコを確認してから帰っていった。その後ろ姿に「ごくろうさまです」と声をかけてからドアを閉め、室内に戻ったわたしは、チャイムを連打してしまう気持ちについて考えてみた。彼はもしかしたら給付金がくばられるこの時期のみの臨時のアルバイトの方かもしれないけど、とにかくその気持ちを想像してみようと努めてみた。

札幌市役所のホームページの情報によると、5月1日現在の札幌市の人口は 約190万人。定額給付金の申請書はひとりひとりに配られるわけじゃなくて世帯ごとだと聞いているけど、その世帯数は 約88万5千世帯 。配達員さんたちは、通常の郵便物に加えて、これだけの数の申請書を配らなくてはならない。しかもそのすべてが書留だ。受け取った証にハンコをもらわなくてはならない。ポストに投函して終わりとういうわけではない。不在の家には不在票を入れなくてはならない。想像してみるにこれは、おそろしく大変な作業だ。

もしかしたら。不在の家が続き、チャイムを鳴らしても鳴らしても応答なしで、「どうせここの家だって誰もいないだろう。連打してしまえ」って思ってやけくそで5連打したらわたしが「はーい」と出てきちゃったということなのかもしれない。

想像はつきない。そのほかにも、あんなことやこんなことがあったんだろうか、などと考えていたら切なくなってきた。思い浮かぶのはマイナスな出来事ばかり。

・・・待てよ。もしかして。定額給付金を運ぶ使命感に燃え、幸運の使者来訪だぜという気持ちが彼を高ぶらせ、それが連打につながったということもあるかもしれない。まあ、どちらにしても連打は驚くので、できればもうすこし心臓に優しく配達してもらえると嬉しいです。

申請書はきょうの朝、相方がポストに投函してきたそうです。実際口座に振り込まれるのは数週間後になるらしいけど、使い道をあれこれ考えるのは楽しいです。マンガをおとな買い、デジカメを買い替える足しにする、超高級なお菓子を1箱買ってみる、などなど。どうしようかな〜。