4月の14日にモグが亡くなった。モグはチョコレート色のラブラドール・レトリバー。今年で11歳になるはずだった。でも7月19日の誕生日を迎える前に旅立ってしまった。モグたんはがさつだったし、いつまでたっても子犬のように落ち着きがなかった。嬉しいときに振り回される太いしっぽはムチのようだったし、大きな足で踏みつけられると涙が出るほど痛かった。食べ物を前にすると目の色がかわり周りなんて見えなくなる。外に出せばはしゃぎまくり、くるくる回りながら体当たりをしてきて、はじき飛ばされて倒れたこともあった。変な物を拾い食いして腸が詰まりうんちが出なくなってレントゲンを撮ったこと。ラブラドールのくせに水が大きらいでいちども泳いだことがないこと。盗み食いをするために冷蔵庫を壊したこと。壁に穴をあけたり畳を掘ったこと。子犬のころにはわたしの顔の上で寝てわたしを窒息死寸前に追いやったこともあった。あまりにもやんちゃな子犬のモグに疲れ果て、精魂尽き果てたわたしは自立神経のバランスを崩し、布団から起き上がれなくなって神経科の世話になったこと。
……書き連ねるとろくな思い出がない。でも。
モグたんがいてくれるだけで安心だった。モグたんをなでると癒された。柔らかい耳の手触り、香ばしい肉球。モグたんがいなくてさびしい。
夫がケーキを買ってきた。7月19日はモグの誕生日だったから、モグが生きていれば今年もお祝いをするはずだった。モグは亡くなってしまったけど、ケーキでも食べておめでとうって言ってあげて、と。
モグたん、11歳の誕生日おめでとう。