ファンシーな思い付き

お風呂場の鏡に映った自分の尻。もし筋肉を鍛えたならきゅっと上がるのかもしれない。ヒップアップ。そうするとどのような見た目になるのか。振り返って鏡面の尻を見つめながら瞬間的にふんっとちからを入れてみた。尻はぐっと引き締まった。ほほう、上がるな。では筋トレにいそしむのもいいかもしれない。そうすれば美尻への道を歩めるのだろうか、などと思った次の瞬間。臀部の左下がめちゃくちゃ痛くなった。肉離れしたのかと思うほどの激痛。固まって動けない。痛すぎて足が動かせない。ちょっとでも動こうものなら激しいこむら返りのような、引き絞られるような痛みが走る。無言でシャワーの湯に打たれながらフリーズしていた。そのとき頭をよぎったのは。明日、朝イチで整形外科へ向かう自分の姿。歩けないからタクシーで。マンションの入り口まではなんとか手すりを伝ってほんの少しづつ歩を進めることだろう。あまりの激痛に額に大粒の汗をにじませながら......それよりこれからどうしよう。風呂を出るにも一苦労だ。どうやって体を拭こうか、どうやってパジャマを着ようか、明日の朝どうやってごはんの用意や身支度をしたらいいのか。治るまでどうやって生活をしよう。そんなことをぐるぐると考えているうちに痛みがふっとやわらいできた。一時的に痛かっただけのようで、その後はどんどん引いていく。最悪の状況を想像したあとの平穏。普通に動けることの有難さ。

今はコロナが蔓延していいるさなか、そんな折にちょっとお尻に力入れ過ぎちゃって肉離れしましたという理由で病院に行ったらどうなるのでしょうか。スポーツをしていたわけでもなく、仕事をしていたわけでもない。鏡を見ているうちにちょっとぐいっとちからを込めてみただけ、それもほんの戯れに。そんな事情を話したら笑われるだろうか。それともこんな大変な時にと叱られてしまうだろうか。普段と違う今だから、やっぱりコロナはもちろんだけど、こんなふうに突発的に病院に行くことにためらいを感じる。そしてこういった経験をすると思うよね。平時は助かる病気や怪我でも助からないかもしれないのではないかと。やっぱりちょっとしたことでも怖くなるし、なるべく急な怪我や病気はしたくないなと思う。それが医療に携わる方々への協力ということになるのかもしれない。感染対策ももちろんだけど。だから思い付きで尻に渾身の力を込めてはいけない。こうしている今もまだ臀部左下、足の付け根に近い部分がまじで痛いんだ。軽い筋肉痛のような痛み。事件から3時間は経ってるのに。こんなになるほどのちからの入れ方ってどんだけ。今回はただ痛めただけで普通に動き回れるし、明日になればかなり楽になっていると思う、というかそう信じたい。普段やらないようなとっぴな行動は今は謹んでおこうと思ったお風呂タイムの出来事でした。

でもほんと、どうしてこんなになるほどのちからを入れてしまったのか。全力でやってしまったのが大ダメージにつながったのかもしれません。初めての経験だったので、今はやっちまった感がすごいです。ヒップアップの予想図を見ようとしていてこうなったというなんともファンシーな思い付きでこんなことになるとはね。お尻の無事を祈りながら今日はもう寝ましょう。皆様もお尻を大事にしてくださいね。では、よい夢を。