夕霧ジャーナル

ブランクはありますが2005年から長く続いているブログです。

夏と海辺

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モグさんは大型犬なので、たいてい怖がられる。だからいつも遠慮気味に散歩しているけど、ケガをして通常の動きができないわたしは、いつものように素早く退いてあげることができなかった。足を引きずりながらひょこひょことはしっこに寄り道を譲るが、その動作がのろいため通行人を少し待たせることになる。中には犬が怖くてたまらない人だっている。そういう人から見れば、わたしのようにケガをして足を引きずっている人間が大きな犬を連れているのは不安だろう。「その足でその大きな犬を制御できるのですか」と思うのではないだろうか。実際、立ちすくんで顔を引きつらせ、両手の掌を前に突き出して小刻みに振りながら怖がっていた人もいた。30代とおぼしき男性だったが、こういう人は過去に何か犬関係で怖い目に遭ったのかもしれない。大抵の犬は、人間が大好きだ。それはモグさんも例外ではない。これまで人に襲いかかったことなんてただの一度もない。そんなに怖がらなくちゃならないような犬じゃない。それにわたしはモグさんの扱いに慣れているから、例えこうして足をケガしていても、制御できなくなってしまうこともない。でも、仕方がない。だからいつも河原へゴーだった。

車があってよかった。もしも相方が車ででかけていたら、こうしてこの河原へ行くこともできなかった。誰にも迷惑をかけず怖がらせず、ゆっくりモグさんと歩くことができた。ペーパードライバーを脱するのはけっこう大変だったけど、がんばってよかった。

もしもケガをしていなかったらモグさんと一緒に海にでも行こうかと思っていた。しかしよく考えてみれば、なかなか難しい。ここから一番近い海と言えば、小樽市銭函(ぜにばこ、たわむれにドルバコと呼ばれたりもするらしい)の旧・大浜、現在はドリームビーチと呼ばれているあの浜だろう。しかしあそこはねー、夏になると海辺に怪しげな看板が出るのだ。段ボールの切れっぱしに極太マジックで「駐車料金800円」などと書かれた看板が。ここの浜辺は普段出入り自由でお金を取られることなんてないのに、夏の海水浴シーズンになると、浜に沿って点在する駐車スペースには門番が現れ、根拠不明のお金を取り立てる。わたしが以前出会った門番は、よれよれのTシャツに短パン、ビーサン履いてボサボサの白髪をなびかせた、痩せた仙人っぽい男性だった。その彼が手のひらを上に向けて差し出し、怒ったような口調で「800円」とぶっきらぼうに宣言するのだ。払わなければ車を停めさせないという。うっかり入り込んで、状況に流されて払ってしまったことがあるのだが、悔しかったのでそれ以来行っていない。今はどうなのかわからないけど、夏の間は行く気がしないね。もちろん無料の駐車スペースもある。しかしそういったところは混雑しているのでモグさんを連れて歩くのはためらわれるのだ。

(もしもわたしがお金に余裕のある身の上なら。この800円は仙人の酒代になるのだろうかと思いつつも喜捨するだろう。彼がどういった人物で、どのような経緯でこうして門番を務めているのかはわからないが、世の中持ちつ持たれつでお互い様だからだ。しかし、わたしはお金持ちではないのでその800円が惜しい。だから近づかない)

ではどこに行こう。そのお隣の朝里の浜なら行けそうだけど、あそこは岩場なのでモグさんには向いていないかもしれない。岩の上でたくさんの海ゴキさんたちが日向ぼっこしている光景もちょっと。歩くたびに海ゴキさんが電光石火の早業でサササーッとチリヂリに逃げて行く様を眺めるのはあまり楽しいものではない。かといってそれ以上遠くへ行くのは、ペーパードライバーを脱して間もないわたしにとっては不安。

ああそうか。ならばケガをしていなくても、どのみち海へは行けなかったんだね。しかし、今月の末くらいまでに一度は夏の海を見たい。連れて行ってもらえるといいんだけど。

※写真に写っている黒い点。これはちょうどここを飛んでいた大きな鳥。たぶんとんび?でもそれにしては逞しかったけど本当にトンビ?

※ここは「モエレ沼公園」の辺境。園内へ続く細い一本道を散歩していました。

※すっきり晴れ渡った日に限ってデジカメを忘れていってしまったので、結果的におさめられたのはこのような曇天模様の空のみでした。